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「まいにちが誕生日」 本山賢司 プロフィール

誕生日パーティがあるから来ない、という誘いをまだ受けたことがない。声をかけられなくて幸いだと思っている。なにしろぼくは誕生日パーティという言葉を聞いただけで、鳥肌が立ってしまいそうになるのだ。
誕生日パーティを催す人たちというのは、幼少のころお友だちを呼び、素敵なママの手作りケーキを囲んだことがあるのだろう。リボンで結ばれたプレゼントの箱を開け、可愛い女の子や利発そうな男の子が紅葉のような手で拍手をする。たとえば主賓が美子という少女漫画の主人公のようなキラキラ目玉ハイライト入りの女の子なら、ハッピバースデイ、ヨシコー、ハッピバースデイ、ヨシコーと味噌汁のアサリのように口を開け揃え、身の毛もよだつ誕生日の歌をうたったにちがいない。

ゴムの短靴をはき、ヨレヨレのランニングシャツと半ズボン姿。棒切れを振り回していたぼくにはこんな会とは縁がない。仲間が集まるのは畑泥棒かチャンバラごっこだった。とうわけで、ぼくに誕生日パーティの素養がないのが大きな理由でもある。が、子供の誕生日パーティを例に取ったのは、比喩に過ぎない。つまりマニュアル通りでしか楽しめないパーティの性質のことをいっているのである。
行きつけのバーまたは居酒屋でも、ちょっとした条件がクリアーされていれば立派なパーティといえる。まずは仕事の話をしない。馬鹿サラリーマンがする、仲間や上司の陰口悪口のことだ。○○論で、檄を飛ばすことがあるかも知れない各人が独立した個人であること。女性連れだったり友人と一緒。場所をわきまえた、スタンスのとれた関係。そんな仲間の誕生日や結婚記念日を偶然知る。同じものを一杯おごらせてもらう。おめでとうと言って肩を叩く。グラスを捧げ乾杯をする。それぞれの表現で贈り物をする。

行きつけのU・C(University Club)で隠しボトルを振るまうときが、そんなときだ。キープボトルはワイルドターキ18年。しかし、とっておきのときに遭遇すると、とっておきの酒、エバンウイリアムズ24年をワンショット振るまう。これがこの店での、ぼくのお祝いの方法だ。
街を歩いていてふとだれかの誕生日を思いだし、花を1本、あるいは本を贈る。毎日が誕生日パーティというのは、そんな気分のことである。が、やはり居心地のいいバーでとぐろを巻き、ときどき隠し酒を振るまう方が、どうやらぼくには似合っているようだ。

もとやま・けんじ 1946年、北海道生まれ。作家、イラストレーター。アウトドアライフ、とくに野宿が大好き。野生動物、植物の生態学にも造詣が深く、自然を見つめる涼しい鋭い感性をもつ。気負いなく、独自の道を淡々と拓く野生児。著書に『野遊び術』(山と渓谷社)『星の降る森』『旅のむし腹のむし』(東京書籍)などがある。

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